地域情報化で掴むべき未来

地域情報化で掴むべき未来

 私は6年ほど前から総務省の「地域情報化アドバイザー」というのをやっている。

 その関係で、地方で講演したり、最近は文章講座を行ったりしている。
 でも、それが、本当に地域情報化に役立ったかは、かなり疑問だ。
 講演などは一過性のもの。そこから何かが起こることはほとんどない。確実に「やった」と言えるのは、昨年2-3月に杉並区でやった産休中のママ向けの文章講座。彼女らが書いた商店主インタビューが地域新聞になり、ネットのホームページになった。

 http://wadashotenkai.jimdo.com/

 これは、受講生のママたちが大変有能だった(東大卒、慶大卒、公認会計士など)のと、子育ての場としての地域を住みやすい場所にしようという意欲が高かったのが成功要因だった。
 この事例を、横浜・大倉山のママたちが追っかけていて、ここでも商店街活性化が動き出している。

 いま、大倉山のグループが取り組んでいるのが、「街普請事業」だ。

 http://www.city.yokohama.lg.jp/toshi/chiikimachi/machibushin/

 これは横浜市が、地域活性化のためのハードの整備について最高500万円まで補助する事業。
 これに「普請」という江戸時代以前の言葉を当てたのがとても素晴らしい。

 今は、公共事業は税金を使って土木建築業者がやるもの。ところが江戸時代までは、道路や堤防は地元の人が材料を供出し、自ら汗をかいて作った。「あまねく請う」ということで「普請」と言った。「地域ぐるみで公共インフラを整備する」ということだ。この精神が素晴らしい。

 昨年10月、過去の実施事例の発表会と交流会があって、私も参加した。その時、学生が最後のグループ発表で「普請という言葉が古くてダサい」と言った。私はすぐさま立って、「昔の人がやっていた素晴らしいこと、その精神を知らないで、『古いからダメ』というのは、浅薄。ちゃんと辞書を引いて、言葉の意味をくみ取ってから発言してほしい」と言った。

 いま、地域情報化に求められているのは、この「普請」の精神ではないだろうか。
 役所頼み、税金頼みは絶対にダメだ。
 自分たちが愛するふるさとを、もっともっと明るく楽しい、暮らしやすいところにしたい・・・という住民自身の願いがなければ前に進まない。横浜の街普請事業はそうした市民グループが呼応したことで成功例を次々に生み出している。いわば公設民営だ。
 単にハコモノを作るのではなく、住民の「願い」が形=ハードになることで、地域の結束力を高めている。

 地域情報化もインフラ整備の時代は終わった。問題は「利活用」「産業振興=雇用増大」だ。文化とビジネスの創出という言い方もできる。

 ここで、重要なのは、「ニーズの掘り出し」と「マッチング」だと思う。
 杉並の事例は、「消費者目線での商店街活性化」というテーマを持っていたNさんが仕掛けて、ママたちの「ふるさと愛」を引き出し、「文章講座」とマッチングさせたことで大きく前進した。

 「何をやっていいかわからない」ということでは、「ベストプラクティスの発掘と提示」が必要だ。成功事例を知れば、「我々にもできるかもしれない」という気になる。

 そう思った、住民や自治体職員が「駆け込み寺」に行く。そこで、知識と経験がある地域情報化アドバイザーが出かけて、指導・助言をする。

 そういう流れが理想ではないか。
 ここで重要なのは「駆け込み寺」だ。それは総務省が用意する。ここで、誰がどういうことができるかを把握し、この問題にはどのアドバイザーかを推薦する。このアナログな仕事が非常に重要だ。

 折角できた地域情報化アドバイザーをフルに活用すべき。現段階では1割も使われてないのではないか。そう感じている。問題は連係プレーだ。