SFC授業へのメッセージ

「社会基盤と制度設計」受講のみなさんへ

 5月13日と20日の授業を担当する坪田です。テーマは「働くこと」です。
1回目は「自分と仕事」がテーマ、2回目は「社会と仕事」がテーマです。
 
 皆さんは、大学を卒業して、ほとんどの人は社会人になると思います。大半は就職し、一部の人は起業を志すと思います。
 人間にとって「働く」ということは、自立して生きる、一人前であるということの証明です。しかし、これまで養われながら学んできた時期とは異次元の世界です。「自分がやって行けるのか」という不安を抱えながらの船出だと思います。
 働くということは、2つに分かれます。一つは「被雇用者」です。企業でサラリーマンになるのがこれです。雇用者(経営者)の指示で、求められるタスクを達成することで給料を頂くという働き方です。
 もう一つは、自ら事業を興して、逆に他人を雇用して働くというものです。この場合は事業のすべてに責任を持たねばなりません。
 いずれにせよ、「プロ」にならなければ、働いたことにはなりません。サラリーマンの場合は、同期入社でも成果によって昇格昇給に差が付きます。


 私は、1972年に日本経済新聞社に入社し、約16年記者をやり、そのあと5年ほどデスクをやり、その後は管理職として勤務しました。
 管理職になってからは、経営計画を担当し、さらに世界最大のインターネット・プロバイダーであるアメリカオンラインとの合弁事業の契約と運営を手がけました。
 さらに、2003年から6年半、SFCで特別研究教授をやりました。
 記者、ビジネス、大学教授の3つをやった人は、世の中に私だけだと思います。

 一方で、私は、大学時代から「働くこと」を考え続けてきました。
 「会社の命令でやるのではなくて、自分の能力を発揮する舞台として会社があるのだ」と考え、常に「命令される前に提案する」という姿勢を貫いてきました。
 特に最後の16年は、自分の発想で自由自在に仕事をしてきました。それが非常に珍しいので、講談社が注目し、2010年に『人生は自燃力だ!!』という半生記を出版しました。

 これから社会に出て行くみなさんに2回の授業でメッセージを伝えられることはとてもエキサイティングなことです。
 自分が生きたことを「やったぜ」と振り返られるように、常にチャレンジ精神を忘れずに、頑張ってほしいと思います。

 私自身、自分の経験を生かし、各地で文章塾を開いたり、横浜・大倉山と東京・東高円寺で地域おこしの活動に加わって、「共助」の仕組みを作る女性たちを支援しています。

 会社を定年になれば「終わった」と思う人が大半ですが、私は人生は2毛作だったり、もしかすると3毛作かもしれないと思っています。
 未知の世界に挑んで、それを形にできるというのはワクワクするものです。楽しい仲間と頑張れるのも最高です。

 多くの人が、楽しく、前向きに仕事をして、世の中をもっと楽しく、豊かなものにして行けたら・・・と思います。少子高齢化で、若い人にとっては厳しい未来かもしれません。でも、知恵を出せば、必ず道が開けます。
 私は、人生で難問にぶつかるたびに「絶対なんとかする」とファイトがわきました。
 ぜひ、皆さんにも、自分が、自分たちが頑張れば、何とかなる・・・という気持ちで人生に取り組んでほしいと思います。
 「人生は究極の自己満足劇場」(ロボット工学者の古田貴之氏)なのですから。


 課題の『ワークシフト』は出来れば全部読んでください。とてもいい本です。私に興味のある人は『人生は自燃力だ!!』(講談社)を読んでください。


 そのほか、参考になる本は以下です。2回目の授業で、「こんな会社がいい」という話をしましょう。その参考文献です。

1)「だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産フリーエージェント・スタイル」(馬場正尊ほか著、ダイヤモンド社
 東京R不動産というとてもユニークな不動産会社の特異なワークスタイルを紹介しています。
2)WIRED VOL.7 GQ JAPAN.2013年4月号増刊 特集「未来の会社」
 未来の会社がどうなるかを特集したもの。
3)「奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ」(リカルド・セムラー著、総合法令出版)
 地球の裏側に、こんなユニークな会社があるのは驚き。同じ著者で「セムラーイズム」(ソフトバンク文庫)という本もある。
4)『破天荒!サウスウエスト航空 驚愕の経営』(ケビン・フライバーグ・ジャッキー・フライバーグ著、日経BP
 世界の格安航空会社のモデルとなった会社の物語。「社員が第一、顧客が第二」という経営スタイル変革のサクセスストーリー。